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犬の混合ワクチンについて

ワクチン接種とは、弱らせたり死滅させた病原体をわざと感染させる事によって、その感染症にかかった時と同じような状況を作り出し、その病原体に対しての免疫(抵抗力)を作り出すことを言います。

発症すると命に関わるウイルス感染症や細菌感染症は、 実際に症状が出てから治療すると手遅れである事があります。そのような感染症に対し、事前に予防しておいて感染を防ぐ、感染しても発症させない、もしくは感染を広げないという方法としてワクチン接種は大変有効です。

犬で現在リスクのある感染症に対し予防を行っているのが、犬の混合ワクチンです。

犬の混合ワクチンとは

犬の混合ワクチンとは

犬の混合ワクチンには様々な種類があります。

主に4種のコアワクチンとそれ以外のノンコアワクチンに分けられます。

​コアワクチン(皆が予防した方が良い感染症に対するワクチン)

ジステンパーウイルス感染症

パルボウイルス感染症

アデノウイルス感染症(2種類)

​ノンコアワクチン(感染リスクの高い子が予防した方が良いワクチン)

パラインフルエンザウイルス感染症

コロナウイルス感染症

レプトスピラ感染症(2から4種類)

ジステンパーウイルス感染症

呼吸、消化器、神経症状といった様々な症状を示し、死亡率は50%以上の恐ろしい病気です。

 

パルボウイルス感染症

メインは下痢や嘔吐などの消化器症状。無治療の場合は死亡率90%以上ですが、適切な治療を行なった場合は10%以下と言われています。

 

アデノウイルス1型感染症

発熱、嘔吐、下痢などの消化器症状を呈する感染症です。ワクチン未接種の子犬が感染した場合や他の感染症との混合感染した場合、死亡率はかなり高く12時間から24時間で突然死する場合もあります。

 

アデノウイルス2型、パラインフルエンザ

ケンネルコフの原因となる感染症です。カゼ症状を呈します。二次感染や混合感染により重症化すると死亡する場合もあります。パラインフルエンザはノンコアワクチンですが、感染力が極めて高いため他の犬と触れ合う環境にある場合はなるべく予防しましょう。

 

コロナウイルス感染症

消化器症状を呈します。単独ではあまり重症化しませんが、他の感染症と混合感染した場合に重症化するリスクがあります。

 

レプトスピラ感染症

人にも感染する人獣共通感染症であり届出感染症でもあります。発熱・嘔吐・黄疸を初期症状とし、重篤化すると急性腎障害・急性肝障害を起こします。犬の死亡率は50%、人でも重症例で適切な治療が受けられないと致死率が20〜30%と言われている恐ろしい感染症です。

感染源は野生動物の排泄物に含まれており、水辺(池や川)などで経口もしくは経皮的に感染リスクがあります。当院周辺は地域的にレジャー施設も多く感染リスクの高い地域と考えられます。その子自身が水辺に近づかない場合でも、近所の犬が感染症を持っている可能性があるため、散歩に行くのであれば予防しましょう。

本当に犬の混合わkワクチンは必要なの?

Q:本当に犬の混合ワクチンは必要なの?

実は犬の混合ワクチンで防げる感染症のほとんどは届出義務はありません(レプトスピラ症のみ届出義務あり)。つまり、発生状況において確実なデータというものがあまりありません。

 

・届出義務が無い感染症

混合ワクチンで防げる感染症のほとんどはこちらになります。

犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパーウイルス感染症、犬アデノウイルス感染症2種、犬パラインフルエンザ感染症、犬コロナウイルス感染症

発生状況に関しては詳しいデータはありませんが、2014年〜2015年に全国規模での動物病院に対する調査が行われました(参照:http://inu-neko.net/?dog=地域別(都道府県別)犬感染症発生状況マップ(20 )。その時には「調査病院の56.8%で過去2年間に何らかの感染症診断の経験…という調査報告があります。詳しくは参照webページの方をご覧ください。

 

・届出義務がある感染症

犬の混合ワクチンの中で、レプトスピラ感染症がそれに当たります。レプトスピラ感染症は人獣共通感染症ですので、人にも感染します。レプトスピラを保有している動物の排泄物が混じった下水・河川・水たまりなどで経口・経皮的に感染します。犬から人に感染を広げる可能性もあるので、発生したら届出が必要です。

例えば昨年2022年には東京都だけで人で5名(東京都感染症情報センター参照)、犬で2頭(農林水産省、監視感染症の発生状況参照)発生しています。

たったの2頭と思われるかも知れませんが、東京都で登録されている犬はおよそ50万頭、だいたい人口の20〜30分の1になります。つまり、2頭ということは東京都で人で言うと50人に感染しているくらいでイメージして下さい。

ちなみにレプトスピラ感染症は、人では重症例のうち適切な治療が受けられないと、致死率が20〜30%と言われている恐ろしい感染症です。

 

上記の発生状況からすると、少なくとも犬の混合ワクチンで防ぐ感染症は未だ身近に存在しており、特にレプトスピラ感染症に関しては、当院の近隣には河川やキャンプ場など水辺のレジャーが多いので、高リスク地域であると考えられます。

毎年混合ワクチンは接種しなくてはいけないの?

Q:毎年混合ワクチンは接種しなくてはいけないの?

この疑問の答えは大変難しく、飼育環境によっても変わってくる事ですので、主治医の判断に任せた方が良いでしょう。ただし、少なくとも当院の近辺はレプトスピラ感染症リスクの高い地域であり、レプトスピラ感染症に関しては毎年予防しないと抵抗力が維持できないと言われていますので、毎年7種以上のワクチンを接種する事を推奨しています(散歩に出たり、ホテル・トリミング等に定期的に預けられる子は特に)。

 

犬も猫もWASAVA(世界小動物獣医師会)が2020年にアップデートしたワクチネーションガイドによると、0歳の時は4か月齢過ぎになるまで3週間から4週間おきに追加接種を行います(初回接種時期によって3回や4回必要になります)。その後1歳時もしくは最終接種の1年後の追加接種までは免疫をキチンとつけるためには必要と言われています。

昔は3か月齢すぎまでと言われていた時もあり、獣医師によって初年度の追加接種の回数が異なるかも知れません。その場合は主治医の判断に従ってください。

2歳以降のワクチン接種に関しては現在様々な見解が存在しますが、基本的には毎年追加接種もしくは抗体価検査を行わないと、ホテルやトリミング・ドッグランなど利用出来ない所も多いです。

まとめ

まとめ

犬の混合ワクチンで防ぐ感染症は、未だ身近に存在します。特にレプトスピラ感染症は確実に毎年都内でも発生しています。

子犬は4か月過ぎまでは毎月接種し、その1年後(もしくは1歳時)には確実に接種しましょう。その後のワクチンに関しては信頼できる主治医の意見に従った方が良いと思いますが、当院周辺は毎年打たないと抵抗力が維持できないレプトスピラ感染症の高リスク地域と考えられるため、毎年7種以上の混合ワクチンの接種をお勧めいたします。

抗体価チェックについて

抗体価チェックについて

当院では病気や事情によりどうしてもワクチン接種が出来ない子のために、ワクチンの抗体価チェックも行っております。抗体価チェックを行い陽性だった感染症に関しては、ワクチンの追加接種を行わなくても1年間感染症に対する抵抗力があると考えられています。

 

注意事項としては下記の通り

・ワクチン抗体価チェックが行えるのはパルボウイルス感染症、ジステンパーウイルス感染症、アデノウイルス感染症2種のみです。パラインフルエンザウイルス感染症やレプトスピラ感染症に関しては、どちらにしろ1年に1回の追加接種が推奨されていますので、検査の意味が無いと考えられます。

・ワクチン抗体価チェックの証明書は発行いたしますが、ホテルやトリミング等を受け入れてくれるかどうかは、各施設の判断になると思いますので、絶対有効とは言い切れません。

​※この記事に関して、間違っている点やご意見ご要望などございましたら、お問い合わせページよりご連絡いただけると幸いです。

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